2304-06月期アニメの感想-1

 今期は示し合わせたように大ラブコメアニメ時代で、1クールをまとめるために全員追い込みをかけるので6月中旬~7月上旬はずっと悶えていた良いクールだった…。

 前期の感想はこちら↓

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ゴールデンカムイ(4期)
 一時中断から帰って来た4期の続き。原作は完結に向けてめちゃくちゃ盛り上がっていく所だったので楽しみだったが、中断までの回は面白くて中断以降はそこそこだった印象がある。精子探偵宇佐美回の松岡君は言わずもがな凄かった。凄く凄かった。

アイドルマスターシンデレラガールズU149
 アイマスのアニメシリーズの脚本というとどれもどこか隙のある、ツッコみ所が多い構成をしている印象だ。非常に大きなコンテンツとなりながら、本作でも相変わらず仲間内の誰かのミスを起点に話が転がる事も多くて、わざわざそんな誰かのメイン回で他の誰かの好感度が下がりかねない話にしなくても…と思っていたのだが、シリーズでずっとそのスタイルを貫き通している姿は美少女コンテンツなのに結果的に頑固な職人気質の親父の生きざまを見るような気持ちになったりもした。
 このご時世?に真正面から幼い女の子の可愛さをアイドルの魅力として売りにするアニメ、と考えるとどうしても素直に受け止められなかったのだが、前述した一貫性のあるスタイルのお陰でそういう女の子の魅力に対しても堂々と向きあってるのかな、と都合よく解釈しながら見ていた。
 …などと思っていたら満を持しての橘ありす回11話のAパートがめちゃくちゃ良く出来ていたのでたまげた。これまでの表面的ですらある「子供らしさ」表現は全部前振りで、その危うさもそれでも肯定したい思いも自覚的だったシナリオ、めちゃくちゃ好みな話だなあ…。タイトルを冠しているU149が自分たちの個を見ていない大人たちから貼られたレッテルだというの良すぎる。Bパートは解決に向かうためか子供らしさの表現のためかまあまあスルスルと進んだ印象はあったが、それでも歴代のアイマスシリーズのアニメで一番シナリオとコンテががっちり噛み合った話数だったように思う。(終盤でプロデューサーがU149というユニット名を真剣に見つめていたので、もしかしたら最終話で名前に別の意味をプロデューサーが見出すのかなと思ったらそんな事は無かったのでちょっと笑ったが)

 そんな訳でそれまでの話数のシナリオに違和感があるのもある種わざと…ではあるのだが他キャラの担当回という事もあり踏み台になってしまっているのは勿体なかったかな。ただ7話の古賀小春回、「声を持たないのに語るもの、なに?」のシナリオは良かったと思う。アニメに登場するU149のメンバーの中では最も遅く担当する声優が決まった(アニメ化に際して声が付いた)との事だが、そんな存在のキャラが自分も周りの皆のように輝けるお姫様みたいになりたい話であり、EDでは作品の一番の代表曲である「お願い!シンデレラ」を歌う、というのは1本筋の通った綺麗な話だった。まあ夢の中の映像がもっとファンタジックになっていればシュールな感じにもならず猶のこと良かったというのはあるけど。逆に言うと6話の伊礼えりさんコンテ演出回を筆頭に絵の面で強いこのアニメにおいて、7話はシナリオの方が上回ってた回とも言えるかなと。

・君は放課後インソムニア
 今期ダークホースにしてトップクラスに面白かった作品だった。中見と曲が眠れないという共通の悩みを共有した所から始まり、次第に曲の体や中見の家庭といった更に深い秘密もお互いに知るようになる繊細な関係の進展を描く空気感が気持ちよく、aiko主題歌というスペシャルさも非常に上手くマッチしていた。まさか2023年になって病弱ヒロインが死ぬかもしれない事にハラハラしながら青春してる男女の恋愛を見つめる事になるとは…。
 1クールかけての少しずつの関係の進展ながら、1話1話にしっかりとした盛り上がりがあって素晴らしい。特に、学生時代部員が自分一人だった白丸先輩と眠れない中見たち二人が夜の写真で繋がれた3話や、幼い頃の不安から眠りたくなかった中見が曲のお陰で好意的な意味で眠りたくなくなる11話が思い出深い回だし、12話ラストの「俺に攫われてほしい」を13話冒頭でやり直した時に、映像をそのままBANKで使うのではなく、別アングルで描き直しているのがあまり見ない方法で印象的だった。中見の決意がより一層強調されて凄い良かったなあ。

 …という感じで見ていくにつれどんどん素晴らしい回が出てくるのだが、そもそもそういった二人の関係自体の魅力が展開する前、1話のAパートの時点から物凄く面白くて、1話絵コンテ演出を担当した監督の池田ユウキさんの持つ実力の高さに惹かれている。技術的に具体的な事は言えずあくまで見て何となく思った事だが、カットが変わっても時間が全く飛んでおらず、ずっと連続する時間を映してるような、自分がその世界の中に居る感覚のするコンテで凄かったな…。中見が曲と運命的な出会いに至るまでを追体験してるかのようであった。

・ヴィンランドサガ(2期2クール目)

 2クール目も雄弁すぎる美術を堪能出来た。雲の表現だけで何パターンあるのかというぐらい状況に合わせて形を変えるのが最高。本筋の話も、2クールかけて厳しい時代と環境の中で生きていても暴力を選ばない結論に至ったトルフィンというのが丁寧だなあというのは分かる…、のだが1話1話で起きている事が少ないだけに感想にするのが難しい…。画面が凄くて決意ある表情で真っすぐ見つめている顔さえ見れば全部伝わるから言う事無い、というのもある。辻真先先生が「拙速の逆で巧遅の貴重なテク」と評していたのが見事だと思ったので自分もそう言いたかったことにしていい?

 最終回はそういったこれまでの展開の溜めを開放するかのような伸びやかな回であった。けして反動でテンポが早い訳では無く、一般的なアニメの1話に起きる出来事を一般的なテンポでやっているんだが、結果的にこれまでの話数はいかに意識的にゆっくりやっていたのかも分かるし、これまで波乱万丈だったトルフィンがついに帰って来た故郷でギャグも交えて穏やかに会話出来るのも感慨深かった。ずっとレイフさんがトルフィンの事を探していたのを引っ張って来たのに、再会したタイミングが喜んでる状況で無いからってリアクションすら無かったのは凄い判断だと思ったのだが、再会を喜ぶエネルギーが最終回まで抜け出ることなく残っていたのでより効果的だったように思う。

・彼女が公爵邸に行った理由
 原作が韓国で制作されたモノという事だがあんまり文化の違いによる表現の違和感を覚えることは無く、乙女ゲー的な自分が好きな話だったので楽しかった。何といっても転生した身のせいか物事を俯瞰して見ているレリアナさんの緩い脳内リアクションが可愛い…。わがままなイケメンたちに振り回されて嫌そうなモノローグを語る宮本侑芽さんの演技が素晴らしいこと素晴らしいこと。最終話の見切れてるカットが非常にレリアナさんらしさを表していて、全レリアナさんの中で一番可愛かったと思う。

 変な所が無い訳では無いが、日本制作の原作が日本制作のアニメ化した時に上手く行ってないズレによるものと一緒なんじゃないかなという感じだった。

 また、途中で成長してしまったが、ヒーカー大神官の少年姿のデザインが非常に好みだった。これで声が石田彰さんなのだから100点満点だった。

・久保さんは僕を許さない
 一時中断を経て帰って来た組。白石君が他人(母親にすら)に認識されないのに久保さん一族には気付かれるという設定は詳細不明どころか最終回で余計に謎が深まったのだが、11話の沖田博文さんコンテ演出回が凄く良かったからまあ良いか。

 簡単なデザインとはいえ映画を見に来たモブをびっしり描くという狂気の沙汰なのだが、敢えて労力をかけた画面とは思わせない作りになっているように見えて二重に凄い。映画館のシーン以外でもモブが沢山出てきていて、モブの存在を視聴者の意識下に置く事で白石君は久保さんにとって特別な存在と感じさせたい、という事なのかなと。
 どうでも良いが、最近のアニメは実在の場所をそのままモデルにして使う事が多いのに久保さん11話では西武線鷹の台駅から電車に乗ったと思ったらJR中央線の車両が映り、そのまま多摩モノレール立飛駅に着いたのに、降りた駅の目の前はJR武蔵境駅前で、映画館内もどこか分からないがTOHO立川立飛ではない、という不思議な描写をしていたのが面白かった。勿論実在の場所通りである必要は無いが、実在の場所を参考にした上で複数箇所のキメラになっている必要性もよく分からなかったので意図が気になる。

・事情を知らない転校生がグイグイくる。
 石上さん小原さんの新グルグルコンビなキャスティング。最初は高田君がグイグイ行く事で西村さんの代わりに虐められるんじゃないかと思ってしまったのだが、小学生だし虐められる事になった理由が些細なものであれば状況が好転するきっかけも些細なものなのかもしれない。
 高田君が西村さんの家庭の事情を知ってしまう4話が特に良かった。これまでの高田君の純粋な気持ちで死神をカッコいいと言っていた言動を追い詰めているかのような夏の環境音やゆっくりとしたPAN・ズームが非常に効果的で、影山監督のDYNAMIC CHORDでも印象的だった余韻の演出(あれは当時の苦肉の策でもあっただろうとはいえ)がバッチリ決まっていたように思う。

・贄姫と獣の王(1クール目)
 今期も面白いアニメを作るぜ今千秋監督。ヒロインのサリフィーは勿論、マスコット的なキュクとロプス、更には爬虫類姿のアミト姫すらも非常に愛嬌があって可愛い。話自体はシンプルな構造なんだけど、多分キャラの関係自体も監督によって見やすく整理されてるんだろうなと思う。
 てっきり1クールで終わりだと思ったら連続2クールモノで、もはや深夜アニメではそれが出来るだけで凄いのだが、1クール目ラストの話がとても良かった。明かされた王の幼少期の父親との記憶があまりにもお辛く、何一つとして良いことが無い過去であったが、だからこそサリフィと出会って光を得た、というのが強調されていた。

・【推しの子】
 そもそも、「芸能人が妊娠した時に今死ねばワンチャンその子供として転生できる」という元ネタ自体にツッコみ所が無限にあるネットミームなのに、それを利用しておいて双子の片割は数年前に死んだ子の生まれ変わりなのがおかしくないか、って昔原作の序盤を読んだ時点で思ってた。

Dr.STONE(3期)
 1クールのみ放送でまた間を空ける事になってしまうのは残念だが、連続する1つのシリーズの中に何度も盛り上がり所が有ってしっかり面白かった。これまでのシリーズでも石の世界で失われてしまった先人たちの偉業を再興する、というフォーマットが良い循環を見せていたが、今回はその先人がメインキャラである千空の父であるだけに、執念が乗っかっているので尚の事熱さが増していた。

・Opus.COLORs
 多田監督を筆頭にスタミュ、ノブレスのスタッフ達が作る新作で、毎度の事ながら台詞が良い。と言ってもどう良いのか言葉にするのが難しく、生っぽいがリアルを追求しすぎた生っぽさでは無く、アニメ的な台詞と生っぽさの丁度良いとこ取りしたような感じと言ったら良いんだろうか…。聞いててスッと入ってくる感じだった。パーセプションアートが結局普通のデジタルデータイラストとどう違うかはよく分からなかったが、当たり前のようにデジタルデータをいつ消えても、いつ欠けて完全じゃなくなってもおかしくないものとして扱っていたのが良かった気がする。

異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する
 ミルパンセ板垣伸総監督の新作。今回撮影処理がめちゃくちゃ良くて、ここまで原作絵のような塗りを再現するには相当撮影でブラシなどの処理に時間を掛けないといけないのでは無いだろうか。そうなってくると作画のスケジュールとの両立が難しそうだが、これまでの板垣監督アニメのような枚数を最小限にした動きのカクつきは殆ど無かった(カクカクな動きで乗り切ってる所が全く無い訳では無いがこれまでより少ない上に、枚数削ったからには作画の崩れはほぼ無いように踏ん張っていたと思う)。キャラ以外にもエフェクトの撮影処理も非常にカッコいいので見応えがある。

 異世界以上に現実でタイトル通り無双させるのは相当難しそうで、超エリートの集まる学校にしてはあまりにも普通の学校行事ばかり行っていたり不良がグラウンドに乗り込んできたのを成敗したと思ったらその後も授業が続いたのはかなり笑ってしまった。まあその辺の原作からしてトンチキな所もどうしようもないからには本気でやってる感じだったので良かった。EDをなぜかスガシカオが歌っていて、最後まで作品とミスマッチしてるんじゃないかというオモシロは残っていたのだが、それでもまず上等な舞台を用意して身の丈をそれに合わせられるように整えていく姿勢に感心していた。

ポケットモンスター(新シリーズ第1クール)
 偉大な主人公サトシさんが現役を退き、リコとロイのダブル主人公となった新シリーズ。正直言って前シリーズ以上にめちゃくちゃ面白い。これまでだとサンムーンシリーズが一番好きでずっと話も面白かったしずっと作画も凄かったのだが、既にそれより好きかもしれない。
 シリーズ構成・佐藤大さんという事で、今作も壮大な謎に出会う主人公がそれを巡って旅をしていく中で非日常に触れ、結果的に自分の身の回りにある日常の尊さ・家族が自分の事を想ってくれているありがたみを振り返れる作風なのだが、ポケモンのフォーマットに当てはめるとこんなにハマるんだな、という事に感動している。なんと言っても謎やそれにまつわるルールが長年慣れ親しんだポケモンゲーム由来のモノなので分かりやすいのはめちゃくちゃ強い…。その分このテーマでやりたい事がストレートに受け取れる。

 リコロイたちが世界の素晴らしさに感銘を受ける子供らしい純粋さも良いし、それを見守るライジンボルテッカーズのメンバーたちが保護者であると同時に子供の頃の純粋さをまだ持っていてリコロイたちと同じ目線に立てるのも全部良い…。何でもないような台詞すら素晴らしくてほぼ毎週泣いています、ガチで。
 そしてなんと言っても素晴らしいのが今シリーズはポケモンが凄く可愛い事だと思う。

 ホゲータ自体、ゲームの発売前PVの時点で可愛いと思ったデザインの素晴らしさもあるんだけど、それを活かす仕草のアイデアが実に良い。ホゲータが好きすぎるのでその画像ばかりチョイスしてしまったが、どのポケモンも同様に魅力が最大限に引き出されている。ポケモンは意思疎通は出来るが言葉で会話は出来ずあくまで独立した思考で動く生物、というのがしっかり強調されているからこそ、コミュニケーションが取れた時の喜びがひとしおになる。今最も面白いアニメの一つ。

・スキップとローファー
 OP主題歌「メロウ」が放送前の番宣CMで台詞などが入っている裏で流れているのを聞いててもこれ絶対名曲だろと思うぐらいには素晴らしくて、映像が付いたら更に素晴らしいものになったのでもうその時点で勝ちみたいなものだった。サビのダンスは振り付けもタイミングも表情もどれも完璧。

 本編も非常に面白く、なんというかポジティブな気持ちになれるちびまる子ちゃん、という印象を受けた。まあ岩倉美津未さんがおかっぱみたいな髪型してる所にも引っ張られてるのもあるかもしれないがそれ以上に、それぞれのキャラがリアルかつ細かい悩みに左右されている所にそう感じた理由があると思っている。まだ子供と思える彼女・彼らにもこれまで自らが経験してきた十数年間の様々な人生があって、そこで発生した悩みを解決しなくてもそれぞれのコミュニティを築いて生きていけるけど、それを突破すると更に世界が広がるのが良い感じ。
 その中で志摩君の悩みは結構大きい出来事の元に生まれたものであるが、その反動故に大らかなスケールで生きてる人たちの言動が志摩君を変えるきっかけになっており、主人公の岩倉さんと同じぐらい、演劇部の兼近先輩の存在が大きかったのがグッと来た。
 11話の兼近先輩たちのお芝居のシーンにて、演劇部のお芝居の演技っぽさ、芝居が終わって外でお客さんにお礼を言ってるけど反響が不安で芝居の時以上に緊張してる感じ、友達に内容を褒められたお陰で色々解放されて喜ぶ感じ、どれも木村良平さんの演技が素晴らしすぎる…。特に「めちゃくちゃ上手い訳じゃないけど普通の人よりは経験があるので慣れてる芝居」の演技が良すぎて一連のシーンを何度も見返してしまった。OPの歌詞「眩しくて眩しくて僕は目を逸らしてしまう」というのは勿論志摩君から見た岩倉さん評価なんだろうけど、兼近先輩の事も言っているように勝手に受け取っている。
 京王線沿線の学校っぽく、吉祥寺が出てきたので以前住んでいた身としてはニッコリだった。

・私の百合はお仕事です!
 面白かった。原作の持つ力もあるだろうけど、やっぱりハヤシナオキさんの脚本作品好きだな。最初はコンセプトカフェの設定が異様に感じて、店員の関係を囃し立てる客たちが凄く邪悪な存在だと思って見ていたんだが、この場所があるからこそ過去の出来事や現在の関係性を確認できるようになっていて、非常に上手く機能していた。中盤以降は果乃子さんが凄く面白く場をかき回してくれた事もあり、どんどん盛り上がっていったと思う。最終回の最後の最後、大げさに立てる事無くあまりにも自然に陽芽と美月が連弾する所で終わったのが見事。
 色とデザインが凄く良くて、髪の頭頂部側にも影色が塗り分けられているしハイライトも白なのでよく目立つ。そこにうっすらグラデーションも掛けているので情報量が多くて、アニメ塗りらしい影の付け方ながら常に画面に見応えがあった。

 こちらも吉祥寺が出てくるのだが舞台そのものになっていて、スキップとローファー以上に頻繁に映ったのも良かった。当然駅前も出てくるのでかなり岩倉さんたちとニアミスしていた。

 

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 今期も大したことは書いてないが長くなったなと思うので分割することにした。後半へ続く。

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