2301-03月期アニメの感想-2

 大したことは書いてないが長くなり過ぎたので分割。Part1はこちら。

ジョジョの奇妙な冒険 第6部 ストーンオーシャン(3クール目)

 昔ジャンプを買い始めてからジョジョで最初に触れたのがこの6部という事で、ある種思い出深いシリーズ。当時は全然分からなかったし、今見ても6部は能力自体が難解なので相変わらず理解した訳ではないのだが、過去シリーズにも触れて作品を通じて荒木先生がやりたい事自体はある程度分かっているので楽しく見れたと思う。
 アニメの1部からずっとそうだけど、1つの部内でシュールな空気になる事も2度や3度に収まらないこの原作で、テンションを間違えないのが凄いことだと思う。何言ってるか分からなくてもこいつはこの主張がしたいんだ!の時にちゃんと真面目に熱くなれる所が良い。その作品の持つパワーをちゃんと引き出すと、自然と声優さんの演技も良いものが引き出される事が多かった。
 特にリキエル役:古川慎さんが最高だった~!!既に大人気声優だし今期吸死2期でも主役としてもっと大きな役をやっているのだが、それでもこのリキエルの演技はガイストクラッシャーシレン役から10年以上聞いてきて歴代最高の演技だったと断言できる。体が弱く情けなかった頃のパニックになってる演技、スカイフィッシュを操る能力を得て自信が過剰気味にみなぎる演技、それでも窮地に陥るとまた根の自信の無さが浮かび上がる演技、ボコボコにされて上手く喋れない演技、どれも凄すぎたな…。
※以下、最終話放送後追記
 最終話めーーちゃくちゃ良かった!!ジョジョアニメと言えば3部以降では最終回付近のラスボスのスタンド能力を模した演出がなされる事が恒例であり、当然今回も期待はしていたのだが、プッチ神父の能力となるとOPが加速して急に終わるとかなんだろうか、ちょっと盛り上がりに欠けそうだな等と予想していた。しかしその予想を綺麗に覆し、メイドインヘヴンの世界一巡を活かして1部から今までをなぞる演出、痺れたな…。
 昔に漫画で読んだ時は主人公の徐倫が死んで、一巡した世界では姿も変わってしまっていた事イコール負けと感じてしまったのだが、辛い運命を受け入れる覚悟を幸福と呼ぶプッチに対して、運命を乗り越える覚悟が大事だとジョースターの血統がずっと示してきた黄金の精神を受け継いだエンポリオが居てくれたから勝てたのだと理解出来るようになれた。「みんな未来なんか知らなくても覚悟があった」というエンポリオのアニメオリジナル台詞が良い。
 「僕の名前はエンポリオです。」こんなにエモいシーンだったんだなあ。最後にRoundaboutを流して6部までのジョースターの血統の戦いにしっかりアニメとしてもケリをつけるのが熱すぎる。本当に良いアニメシリーズだし7部以降のアニメ化も是非続いて欲しい。

・アルスの巨獣

 まさか打ち切りエンド方式で終わってしまうとは…。数多く存在するファンタジー世界系オリジナルアニメの中では世界観の説明がかなり自然で、ごちゃごちゃしないで見れた作品だし、OPは本編映像を多く流用しながらも、音が持つイメージとシンクロするようなカットのチョイスと非常に気持ちの良い編集でかなり好きなヤツだったのだが…。
 子供の頃は死神に目を付けられないように情けない二つ名を与えて、成長した暁には精悍な二つ名を得るという設定が、ゴールデンカムイで認知度の上がったアイヌの風習とほぼ同じなのはどうかと思いつつ、量産されたクウミが自分の二つ名を得るのに対して、クウミを研究していたメザミが帝国?の偉い人から「代わりはいる」と言われていた対比が良かったのに。そのメザミがあまりにあっさり死んだのも今思えば投げっぱなしの影響だったのだろうか。(巨獣に取り込まれたけどラスボスとして復活すると思っていた)

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん

 はめふらを筆頭に乙女ゲー悪役令嬢モノのアニメも大分増えてきた中で、現代日本の方にもそっちはそっちでメインキャラが居るという、これまた別角度からの切り口の話だった。日本とゲーム世界を行ったり来たりしてたら話が取っ散らかりそうなのに凄く見やすくどっちもしっかりキャラが立っていたなあという印象。悪役令嬢の方を主役にした場合、どうしてもゲーム本来のメインヒロインがサブキャラに降格してしまうのをいかに回避するかの理由付けに関しても、神様と関係があり現代日本と繋がる事となった理由にもなっていると設定した事に捻りがあって良かった。
 自分は中村悠一さんの事が声優の中で一番好きで、特にこういう若手女性キャストの導き手になるような主役ポジションの時がかなり好きなので(俺妹、野崎くん、六畳間等々)、最近中々聞かなくなってしまったこの手のアニメのラジオも中村さんゲストの回があったので久々に聞いたりした。

 ラジオ内で中村さんが「ジークヴァルトは最近ではあまりやらないポジションで、自分以外の福山さん杉田さん等の男性キャストも少し前にやることがあった役割の印象」というような事を話していたが、他のゲーム内転生モノと異なり、現代日本がある上で作中作として設定する必要があるので、より記号的な印象になるように一昔前のキャスティングラインだったのだろう。
 ジークヴァルトの演技について、裏が無い人物を演じるために素直に喋る・含みのある人物とみられないように喋り出すまでの溜めを無くす等の演技プランを語る真面目な中村さんの話が聴けて良かった。

カードファイト!! ヴァンガード will+Dress Season2

 2期もコンテと音楽の付け方の両面でリズムの作り方が抜群に上手かった。毎ターン行うドローやカードのセットを基本的に手のアップによるバンクで処理して淡々と進ませる事でメリハリが効いている。
 今回の話は一大催眠寝取り祭りとしか形容しようがない内容となっており、土曜朝8時の放送に戻ってきてやる事かと言いたくなる程丁寧に味方が敵組織のユニフォーマーズの思想に染められている姿を描いていた。よくある洗脳されて明らかに言動がおかしくなってるとか目のハイライトが消えているといった描写は無く、いつも通りの姿と喋りなのにファイトのスタイルはユニフォーマーズのやり方を信奉している所が余計に深く洗脳されているようであった。洗脳されたキャラ達が皆、これでもかと言わんばかりに、仲間と電話して心配されるも「なんともないよ」と受け答えしてるのがあまりにも寝取りモノの文脈すぎて笑ってしまった。

 このアニメを見てる人ならその部分を全員評価するのであまり書く意味無いかとも思うけど、これ評価しないのも嘘だろってなるのでOP・EDともに今期トップクラスに凄かった事に触れておく。

 ヴァンガードユニット同士の長尺カットでの組手やヤマタノオロチのような多頭の龍のグリフォギィラ(↑のYouTubeではまだシルエット状態)という超絶パーツが多くて描くのが大変なユニットすらも動かす作画力が光るOPも、めばち・五十嵐海・謎のアニメ団の異なる絵柄な3組を纏め上げてイラストメインで作るEDも凄かった…。
 dressシリーズは昨今のアニメでは珍しいというか、過去にさかのぼっても中々例を見ない話であるが、なぜか9期まで制作が決まっているので残り5期でどんなOP・EDを作るかだけでもオタクは追いかけた方が良い。別にOPEDだけ突出してクオリティが高いわけじゃなく本編も面白いのでついでに本編も見ていったら良い。

・解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ

 もはや毎クールアニメ化されている追放系作品だが、作品が増える程に環境が変われば自分を評価してくれる人が居るという作りなら良いモノの、どこへ行っても引く手数多の優秀な能力をアピールできずに追放されるのは流石にその主人公の努力が足りないのでは無いかと思う事も増えてきた。
 この作品も最初はそういう類かと思っていたが、義理の兄弟のバシュバーザとの間に色々複雑な事情があるからバシュバーザも追放したし、ダリエル側にも追放を受け入れるしかない理由があった、とまとめたのは結構良かったと思う。出来ればもっと早い段階で事情があると分かると途中の話もお色気要素以外に注目して見れたか。

・お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件

 なんかこの作品を見る時が今期で一番集中していて、一挙手一投足を見逃さないようにしていた気がする…。自分の視聴環境ではテレビで見るためには他のアニメと被っている放送時間だったので当初は後から録画で見ていたが、中盤辺りからは最速MXとほぼ同時に見れるAbemaでの配信を見る程に思い出深い作品になった。
 いやまあ、過去の名曲恋愛ソングのカバーEDのチョイスが全然石見さんの歌い方に合っていない事や、ちょっと髪型をセットして出かけたら知人からも気づかれない上に見知らぬ女性には逆ナンされる周君のスペックのヨイショされっぷりや、真昼を意識する気持ちが高まりつい淫らな夢を見て夢精するというあまりにも今更すぎる展開、それを本人に(夢精はさておき)告白する思春期の人間とは思えない覚悟の決まりっぷり等々、あまりにトンチキな内容を楽しんでいたのではあるが。
 ただそういう歪さは主に、クラスメイトには全く関係を打ち明けていないのに家では普通のカップルどころではないイチャイチャを繰り広げているのがなんだか異様にインモラルな状態である事に起因していたのだが、最終話でほぼ強制的に公開告白をさせられた事で、自他ともに認めるカップルとなったので、まあ…イチャイチャしても良いか…と最終的には納得させられてしまった。こうなったらもう負けを認めるしかない。そもそも最終話の1週前の時点で全国各地を巡る椎名真昼さんイラストを公開してる公式アカウントが日本を飛び越えて世界に進出し、果ては宇宙にまで行った時点でもう負けていたんだよな。お隣の天使様に駄目人間どころか達人に調理されて切られてもしばらく泳げる魚みたいにされていたようだ。石見さんの歌声に全く合わなさそうなOP「ギフト」のカバーが聴けるのも楽しみにしています。

・UniteUp!

 1話の掴みが凄く良かった。自信が無いながらも一歩踏み出してみたさのある明良を後押しをする強火ファンの幼馴染・かっちゃんの存在があまりにも眩しい。毎話EDが変わるとはいえ、1話が明良とアイドルではないかっちゃんの思い出のEDなのは凄い強気な構成ながら納得しかないキャラの立ち方であった。明良は明良で、スペックの高さだけでなく、母親に「奥手な所とか女子の心を鷲掴みよ」と言われる事で自信の無さもアイドルにとっては長所として捉えられているのが良い。しっかりアイドルの事を理解している台詞だ。
 7話の千紘回も、伝統芸能の家出身の子がアイドルになろうとするために家と向き合うというお決まりの展開でありながら、決して父親が反対したい訳では無く、反対されないと千紘が見捨てられてしまったのではと悩む話で令和最先端の構成だなと思った。
 …という所まで書いてたら10話の放送を迎えたのだが、スキャンダルで皆の気持ちがバラバラになりそうになる、という展開におけるスキャンダルが全くスキャンダラスでなく、事務所の代表にして当事者の凛が否定したらそれで解決出来そうなのでどういう着地になるかは不安になってきた(終わってから評価せんかい、とは思うものの延期しちゃって3月中に終わってくれないので…)
 まあでも映像面で、他アニメでは見ないぐらいライブ会場・ライブ映像に対してリアルさを追求していた観客描写が見れたのが良かった。

 サイリウムの光の色や位置がバラバラで物凄く細かく配置されているのが実写映像のようだった…。ライブ映像の作り込みが細かい方のウマ娘アイドリッシュセブンと比べても差を感じる出来である事が分かる。(作品ごとの追及の仕方やリアリティラインが違うのでこっちの方が良いという話では無く)

・イジらないで、長瀞さん 2nd Attack

 先輩にとっての美術と同じように長瀞さんにも柔道に打ち込んでいた過去があったという事実が明らかに。2クール目の中盤になってようやく今明かされるの!?と思ったが、長瀞さんの執着を知る事で先輩側からも更に歩み寄れるようになり、デートに誘えるほどの距離の縮まりも起きてそこからの方が面白かった。
 海で良い雰囲気になった二人をガモちゃんが茶化そうとするが仲間内ヒエラルキーを超えてでも流石にやめようと言えるヨッシーも良い。イジらないで、という事だ。

・遊☆戯☆王ゴーラッシュ!!

 昨年末の3クール目ラストから今期まで、本作がこれまでのシリーズより過去の時間軸っぽい事やベルギャー星人の存在理由の発覚、全員参加の総力戦デュエルという練られた仕掛け等いろんな面で1年目の締めにふさわしい展開で面白かった。特に総力戦デュエルは、開始早々わざわざ3体フルで召喚するためにマシンに乗り込んで出撃したのにブラックホールで一掃される展開や、逆転勝ちの決め手となるカードが墓地のモンスターの数の分パワーアップ=これまで協力してくれた仲間たちの力という効果になっている総力戦ならではの構成も良い。前作主人公である遊我のエースモンスター・セブンスロードマジシャンの効果の継承・発展という意味でも熱いね…。
 2年目もスタートしたが、成長した王道遊歩さんのセーラー服姿も可愛いし今後も楽しみだ。実質SEVENSからの続き物なのでこれがあと1年続けば初代に続く長期シリーズになるのか。ソシャゲのマスターデュエルの売り上げという外部の影響も大きいのだとは思うが、VRAINSが早めの2年半で終わり一旦途切れてしまったシリーズがまた長期で続けられるようになって良かった(VRAINSも話が暗いだけで超面白かっただけに)。

デジモンゴーストゲーム

 1年半放送して完結。マラソンなどの特番や東映への不正アクセスの影響による休止期間もあって全68話と少し短い話数で終了となったが、尺は気にならならい作りになっているし面白かった。自分はあまりデジモンシリーズに思い入れが無いのでどちらかというと鬼太郎6期の作風を継いだ作品として、不条理さのあるシナリオを楽しんでいた。
 鬼太郎と違って販促的に進化して戦うデジモンの姿を見せる必要があるせいか、不条理モノが変化球的にやる良い話を挟む余地が無くてとにかくずっと人間を酷い目に遭わせるデジモンが登場する話ばかり、それも単発ネタでお出ししてくるので、毎週毎週人間が滅亡の危機を迎える事になる。メインキャラもサブキャラもモブキャラも無く、等しく死と隣り合わせであった。

 そんな危険な世界なのだが、事件を起こすデジモンも倒して大人しくさせればやたら聞き分けが良くなるので、あと一歩間違えたら大量の人が死んでるのにラスト2分ぐらいでいつもの日常に元通りとなってくれる。そしてまた次のデジモンが事件を起こす…と無限に続けられそうであった。多分新しい悪魔くんがこのラインを引き継いでると思うので気になっている。まあネトフリ配信のようなので個人的にはウケなくてTV放送に降りて来てくれる事を望むのだけど。

BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS

 こちらはもっと長く6年間の長期シリーズを経て第1部完。とはいえ自分は全体の2~3割ぐらいの話数しか見れていないのだが、第1部完結となる最終シリーズはメインキャラのカワキが関係してくる本筋の話でめちゃくちゃ面白かった。
 NARUTOで大きな問題が解決したその次の世代の話という事で、一応平和な環境で育ったキャラが多いだけに、ひとり不幸な境遇だったカワキが平凡な日常回過ごすことで幸せを掴めている事が際立つし、シリアスをやったらその日常回で掴んだ幸せが手放せないものとして返ってくるのが良い循環だ。
 ナルトとサスケの二人をなぞる形でボルトとカワキというライバル関係の二人が居るだけに、1部完結に合わせてNARUTOと同じようにカワキが木の葉の里を去ってしまう話になるんじゃないか…と心配になる展開だったがその危機は回避してまた二人切磋琢磨していく、しかしベタベタの仲良しになった訳ではない…という着地も綺麗に決まった。
 強いて不満を言うなら、第1部ラストの黄成希さんEDが1クールで役目を終えてしまった事ぐらいだろう。今期アニメの良いOPEDをいくつも紹介したが、一番好きを決めるとなるとこのEDだったなあ。リンクを貼ろうとしたら公式で公開してなくて悲しかったのだが、本当に色が綺麗で、惚れ惚れするような映像だった。

 カラースクリプトが公開されていたが、今後は制作準備段階でコンテのその先の総合的な画面を決める人の役割がどんどん重要になっていく(既になってる)んでしょうね。

不滅のあなたへ Season2

 2期2クール目面白かった。デジモンゴーストゲームが人と神の共存する神話の世界みたいな世界観だとしたら、こっちは完全に神の視点から人間を見ている話の作りであった。

 天国や地獄が出てくるアニメは沢山あるが、このアニメは死んだ人間もフシの力で生き返らせる事が出来るだけに、一般化している宗教観と全く違う独自の死後の世界を「こういうものだ」と決める必要がある、と考えてちゃんとそれを用意出来る段取りの上手さに痺れる。

 あれだけ内容的に長期間にわたっての激闘だったノッカーとの戦いを終えて人間たちの平和な日々を迎えたと思ったら、一気に時代が飛んで仲間たちのそれぞれの死に際を描くというのも凄い。それもけして全てが幸せな終わり方では無いが、ノッカーによって生き死にの自由を奪われておらず、事故になろうと他人に殺されようと自死を選ぼうと人間の間で完結してさえいればフシにとっての目的達成になるというスケール感の出し方があまりにも見事だった。かと言って人間たちとスケールの違う神であるフシとの間に断絶がある訳ではなく、ED映像は死んで魂が行きつく先としてフシの下を選んでいた仲間たちの姿だったと最後に明かされるのも完璧すぎる。しっかり3期も確定してるし現代編をどう描くのかめちゃくちゃ楽しみだなあ。

・便利屋斎藤さん、異世界に行く

 序盤でキャラが立ってない内からポンポン他キャラを紹介していって、これ全員が合流したら凄いなと思っていたが早い段階で良い感じに合流したので組み立て方が上手かったと思う。まあかなりモーロック頼りの話であって、デュラララのようにカチッとハマる群像劇というほどでは無く、頻発するギャグも全部が面白いかと言うとそうでは無かったんだが、下品な基準の単位が出たり敵悪魔にもいろいろ事情を抱えてるヤツが出てくる辺り、ちゃんと異世界側の魅力や独自性を描いてて良かった。
 異世界に来た斎藤さんがあり得ないレベルの特殊なスキルを授けられたとかではないので環境を激変させる訳ではなく、あくまで身一つで活躍し最後皆に受け入れられていて、こっちの世界の一員になる話としてちゃんとしていたなという印象。

アイドリッシュセブン Third BEAT!(ラスト4話)+アイドリッシュセブンVibrato

 ついに第3部完結という事で今期はラストの4話だけだったがそれでもやっぱり面白かった!2クール目に溜めに溜めた鬱憤を一気に晴らす展開の淀みなさと、まだまだ結局抱える爆弾はヤバイという次への期待もしっかり持たせてくれる幕の引き方だった。

 その前に、ラスト4話に先駆けて放送していたVibratoの方にもちょっと触れておく。新作でなく過去に配信で公開された作品なので時系列も1部前後の話だが、アイドリッシュセブンとTRIGGERの間で曲を奪った奪われたに決着をつけるフェスでの共演の話はテレビシリーズでやってなかったのが勿体ないぐらい見事な着地だった。計3種のNATSU☆しようぜ!のクレジットが並んでいるだけで物語の演出になっていると見越しているのがやはり凄い。3部1クール目のEDを中盤で流す構成もそうだが、放送枠内に映るもの全てを使って話を作る事を真剣に考えているのが伝わる。
 そして3部の感想、まず今回の大ボスであった月雲了さんの話。今までも曲の盗作や出演妨害工作拉致監禁、芸能界からの追放を企てられる事は何度もあったが(あるなよ)、殺人未遂まで踏み込んだのでかなり強敵だったし、その情緒も良かった。

 まあ別にアイドリッシュセブンが他アニメへの当てつけにこの台詞を用いた訳じゃないし(もっと過去に公開されたゲームのシナリオ時点でこの場面があるだろうし)、他のアニメも月が綺麗=I LOVE  YOUで使っちゃダメという事では無いんだが、単純にこういう面でも新たな角度からの表現を用いてくるのが好きなんだよな、と再認識した。
 月雲了さんがアイドルを憎んでるのはずっと応援してたアイドルに裏切られたとかではなく、子供の頃からひねくれていた自分がたった1度カリスマアイドルとして有名なゼロのライブを見てもやはり救われなかったから、というキャラ造詣も良い…。勿論それは百にも捻くれてるお前の問題でもっとアイドルに向き合えよとは言われる事なのだが、ずっとゼロを超えるアイドルになろうとしてるアイドリッシュセブンたちは、本当にたった1回見に来た、普段アイドルに興味が無い人間も満足させる救いの神にならないといけない。そういう使命を突きつけてる訳でもあり、この作品の強度が更に増した。
 続いて大した出来事じゃないが環の父の話。前から口元が映っていたかもしれないが、(めちゃくちゃ簡単に防がれたけど)生放送を潰してやろうとする下卑た笑顔も良いし、通常のキャラでは設定する事もない歯の色指定で腹抱える程笑ってしまった。

 確かに芸能人は歯が命とはよく言ったものだけど、じゃあその敵となる人間の設定を考えるにしたって、歯って口を閉じてたら映らない訳で、八重歯とか特徴ある歯じゃない限りデザインを、ましてやその色を第一に考えるポイントとはならないと思うんですよ。成金の金歯とかなら分かるけど、「普通より黄色い歯」だとアップになった時しか実感できない。それなのにここまでインパクトを与えられる色の設定とそれを披露するカットを用意できるのがやっぱり最高。悪意に真剣すぎる。
 そして悪意の極めつけはアイドリッシュセブン新曲の歌詞。いつもは符割りの都合で多少調整して良いと言われてる新曲の歌詞が、今回は作詞家の人に絶対直さないでと言われている。なぜかというと、ナギに向けた政敵である兄からのメッセージが入っているから…。アイドリッシュセブン音ゲーなので当然この曲でも遊べるしこの真意がゲームのシナリオで明かされる前の時点でCDも発売されている。いやどんな気持ちで聞いたら良いんだよ…。前述のNATSU☆しようぜはお客さんの前で一緒に歌う事で解決したけど、流石にこれは問題そのものを明かせないし後々解決も出来ないままの曲になるんじゃないのか…?作品と現実の壁まで突破してくるのはく良いですね。

 なんだか闇部分の話ばかり面白がってしまったが、これがあるからこそ真っすぐなアイドル達が輝いて見えてるわけで、順番にお当番回が回ってくるので全キャラに好感が持てて楽しい。まあ3部は特にシンドイみたいなゲーム勢の感想も見かけるぐらいだし、ここから新規アイドルは増えずZOOLまでの4組でクライマックスまで走るようなので、今後も勿論困難は立ちはだかりつつも爽やかな話の割合は増えていくのかなと思っている。
 アニメスタッフはあまり関わって無いのかなという気はするが、フィルムライブも楽しみだぜ…。