2310-12月期アニメの感想-2

 さて2023年10月~12月期の感想の続きを。Part1はこちら↓

盾の勇者の成り上がり Season3
 2期がなんだかよく分からない話をしているまま駆け抜けてしまった感じだったが、3期は四聖勇者の話だったので面白かった。ただ同時に変な状況だなと思う事はいっぱいあったので不思議な作品だ。闇落ちした剣の勇者・錬を
正気に戻すべく戦うのがそんな何でも無い洞穴の前で良いんだろうか、もっと重要なイベントじゃないんだろうか…となっていた。昔のゲームで容量削減のために再登場するボス敵でもここまで高頻度に襲ってこないぞというぐらい、1クールの内に何回もマイン元王女が四聖勇者を誑かしていたのも、どんどん騙される過程が短くなっていく四聖勇者も独特の味だった。

・攻略うぉんてっど!~異世界救います!?~
 ラスト2話が特に良かった…。ゲーム世界が崩れる際に地面が透過したり、別のグラフィックを読み込んだり、イノー先生の精神世界である死に覚えゲーに出てくるトラップの数々など、現代的なモノも昔懐かしのモノもしっかりとゲームのリアリティがある。作画の面で大陸アニメに上を行かれたかはまだあんまり分からないが、アニメ中のゲーム描写は全然上回ってるかなと思わなくもない。特に、死に覚えゲーステージの最初にジャンプする所で、ブロックを呼び出してそれを乗り越えるのが正統な攻略手順っぽいのに途中で呼び出さず上手く間を突いて飛び越えているのが1回あって、アクションゲームあるある感にかなり真剣だった。
 イノー先生を復活させるために、ただでさえゲームが苦手なエンヤァが自身の復活スキルを活かして高難易度死に覚えゲーを必死に攻略するというストーリー自体も素晴らしく、ゲーム攻略中のエンヤァ役が「ふんっ!」とか「はあっ!」と声を発するだけで他に台詞が無い長尺シーンは大胆ながら熱さに思わず泣いてしまった。

・葬送のフリーレン(1クール目)
 面白い…。日テレが新しい放送枠を作ったり、最初は金曜ロードショーで2時間放送したりと放送前から持ち上げすぎに感じた上、原作のテイスト+ぼっちざろっくでも見られた斎藤圭一郎監督の演出の方向性から考えると非常にchillした内容になる事が予見されたのでバズる方向にウケるとは思っていなかった。実際内容的にはchillしているのだが、長命種の時間の流れを体感できるような穏やかさで、独特な味の原作をここまでしっかりと再現出来るのかと驚かされる。よく動く戦闘シーンでもその落ち着きは失われずどっしり構え続けていた所、断頭台のアウラがネットでハネたのもあって次第にバズ方面でもウケ始めたので凄い。原作の公式Twitterアカウントが覇権を取りたい気持ちをはやらせる事無く、見どころの紹介も無理矢理なタイアップも淡々と乗りこなしているのもブームに一役買っていたように思う。
 9話の藤本航己さん絵コンテ演出回は今期各アニメのいわゆる作画回の中でも一番好きなものだった。シュタルクが上着を着るシーンや戦闘シーンのアクション・エフェクト等すべての動きが素晴らしい。

ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- Rhyme Anima +
 1期はとにかく強盗の五斗山さんの「下手なラップの上手さ」が見事という印象だったが、2期でも五斗山再登場に加えて、モブラッパーのバリエーションが豊かなのが良かった。サメと見せかけたシャチに擬態している水球ラッパーや忍術ラッパー等々、歌こそ披露されていないが変なヤツらばかりで逆説的にメインキャラ達のラップのレベルが補強されたように思える。
 歌う人がコロコロ変わる為にその短いフレーズ内で状況に応じた韻を踏まないとダメだからか、メインキャラのグループ曲は忙しなくてあまりハマっていない事が殆どなのだが、2期のEDは落ち着いたテンポで各グループが自分達の事を歌う曲だったのでめちゃくちゃ好きだった。イラストのデザインや色使い、のびやかなアニメーションの素晴らしさも有って今期見たアニメのEDで一番好きかも。ナゴヤディビジョン・天国の「俺の言葉は、俺よりも素直だったな」など、同じワードの繰り返しなので韻を踏んだ事の強さは薄いが歌詞としてはこちらの方が強い、というものも多く、聴きごたえがあった。

 ラスボス開闢門を倒すんじゃなく救うとなった際、各人が決意する中で乱数が「今のままじゃ勝っても負けても、あいつは自分が正しかったって思ったまま死ぬ。それはイラッとするよね」と言うのが凄く良かった。それぞれのスタンスがある中で最終回だからとご都合で足並みを揃えた訳じゃない良い台詞だ。

・終末のワルキューレⅡ 後編
 6話1試合分のみの放送で神側だと思った仏陀が人間側で出たら、神側の代打の七福神が実は零福で更にその中に波旬が居たという、何から何までが「何?」
としか言えないシリーズだった。とはいえ原作のキャッチコピーが「小5気絶!中2悶絶!」らしいので作品のストロングポイントはしっかり出ているのだろう。実際小5気絶はとても良いフレーズだと思う。また、このアニメはテレビ放送にあたってキャストオーコメを副音声でやってくれる上に、本編の内容そっちのけでキャスト二人が語り合う事が多いので、中村悠一さんと村瀬歩さんの二人による演技論の話や出演してもいない日笠陽子さんの変な話とか聞けてありがたかった。

ゴブリンスレイヤー
 外でゴブリンスレイヤーさんが兜を外したりと大きな進展があったが、最後まで顔を見せるようなシーンは無い作品だと思ってたので意外だった。スタッフが色々変わってる事もあり、別作品になったようにすら思わなくも無い。少年魔法使いがネギ・スプリングフィールドにしか見えなかったのはなんだったのだろう…。元々やる夫スレでキャラをAAに当てはめていたようだがネギのAAを使っていたかどうかは検索で簡単に調べた程度では出てこず。
 今期はフリーレンを筆頭に長命種の人生に関する尺度の話をよく見たが、この作品のエルフは8000歳でもまだ婚期の内という尺度のようで、そこまで長命だと寿命で死ぬという事の方が珍しいのかなと考えていた。

・アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】
 そもそも1期を見れていなかったので両方とも全部見る。病とそれに対する差別、そこから発生した戦争が目の前にある世界を表現するべく選択された絵柄や色、背景、声の演技で、息苦しさが終始非常によく出ていた。デフォルメやイメージ背景で和ますとかそういう選択も無い。なんならシネスコ風のアスペクト比で画面が狭いのすら息苦しさに一役買っているように思える。
 一気に見たせいか、あれだけ残忍な敵として活躍していたメフィストにも悲しき過去がありあっさり追い込まれていて、2期1話でロドスのメンバーにトラウマを植え付けるような脅威だったフロストノヴァさんの隊が気付いたら敗北していたというのはちょっと肩透かしを食らった印象がある。まあでも原作のゲームからしてドクターの指示でロドス側を勝利へと導く戦略ゲームなのだろうし、勝ったのにシナリオ上は負けになってて一向に戦況は変わりませんってのもおかしいからこの変化は正しいか。
 2期1話でメフィストが街の人間を虐殺してるっぽいのに死体は映らずただビルを焼いただけにしか見えなかったのはなんだったんだろう。これも悲しき過去で感情移入してもらうために残忍に見え過ぎないようにする配慮だったんだろうか。

・アンデッドアンラック(1クール目)
 面白い。次々とジャンプ漫画の力の入ったアニメ化がされてるとはいえ、正直アンデラまでここまで良いアニメになるとは思ってなかった。伏線やルールのある能力の攻略など、色々とバレバレにならない程度に事前に印象づけておく必要がある要素が多い作品なので、八瀬監督のシャフト系演出は凄くピッタリハマっている。中村悠一さんがすっかりジャンプ強キャラ御用達声優になっているのは嬉しい。

・はめつのおうこく
 原作のストーリーからして何がしたい作品だったんだ…という形で評価が難しい。原作者の前の作品は編集の思い通りに作らされた恨みから前作キャラを死なせまくった〜というような最もらしい理由が広まっていたが、作者の他作品をちょっと読んでみても前提となっている世界をぶっ壊す話は元々の作風のようにも思えたのでそういう趣味なだけな気がする。アニメとしてはドロカさんがしっかり可愛く描かれてて元永監督らしさが出ていたと思います。

・経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。
 最初はタイトルから想像する通りの経験の有無という意味だが経験有りの月愛と並び立てるように龍斗が月愛との初めてにあたる経験を二人で模索していく純粋さは結構好きだ。全ての関係の進展が、周りも含めて恋愛事を起点に発生するのは無理矢理な感じがありつつも一貫性はある…となんか納得させられる凄みを感じる内容だった。OPのサビで尻や胸がアップになるのはポップな曲調と合わせるにはちょっと…と思いつつも音に対するカメラワークのハマり方自体は気持ち良かった。

め組の大吾 救国のオレンジ
 20年ほど前に連載していた前身作の頃からファンな作品で、それをむらた雅彦監督ブレインズベースで制作してくれるかなりありがたい組み合わせ。…なのだが、2クール分放送するには原作が足りずかなり間延びしてしまっているのが勿体無い。自分の観測範囲ではアニメから入った人の評価も結構高いので、原作のポテンシャルの高さや、監督自らコンテ演出に高頻度で登板してくれている尽力ぶりを感じられて嬉しさはあるのだが、どうせならもっと大人気になって欲しいな〜!という贅沢な悩みを抱えながら見ています。

・キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~
 プリキュアの新作をEテレで放送、しかも旧作のメンバーのその後を描く事になる大人になってからの作品、というのはかなり攻めた企画をしているのだが…相変わらず東映SDGsなりの問題や課題を考える意識が低すぎると言わざるを得ない。不法投棄が問題とか以前に自治体が全く機能せずゴミで溢れてスラムみたいになってる街、雑すぎるネットの悪意、魔女見習いを探してでも擦り倒したフェアトレードをまた何も発展させずに言葉だけ利用、果ては宅地開発のために山を開拓しようとする企業の人たちって…映画ドラえもんのび太のアニマル惑星で33年前に問題にしてたようなテーマだぞ?という気持ち。
 中世みたいな街並みなのにバカデカい鐘の塔が既にあったとか、咲の婚約者が最後空港への見送りも来ないとかの適当さは正直いつものプリキュア通りかなと許せるのだが、こういう実績解除とか点数稼ぎみたいなやり方が続いているのからは早く脱却して欲しい。

・新しい上司はど天然
 新しい上司の天然ぶりよりも、元上司のマジで危ない人間ぶりの方が面白かった所はある。元同僚の話によると別の上司もヤバいし、その元同僚もヤバいと思いながら働いてるので相当ヤバい会社な気がする。でも終盤に出てきた不動産屋もとても条件に当てはまってなさそうなカスみたいな物件しか紹介してないのでデフォルトでそんな世界なのかもしれない。1人原画回が2回あったり、最終回では非常にキマった絵や撮処理が見れて絵的には好きだった。

・豚のレバーは加熱しろ
 制作スケジュールが大変だったNo.9アニメの一つ、というかこれはまだ最終回を迎えられてない。ただそれ以前の問題として、この世界には理不尽にしか思えない仕組みがあってでもそれはこの世界に大いなる真理があるからで~、という話をやりたいにしては序盤のまだスケジュールの余裕があったはずの時点で全く上手く段取れていなかったように思う。チェックポイントの通過のようにただこの世界はこうなっています、でその場の話が終わっていたのは、作画が間に合っていなくて戦闘シーンが何やっていたか分からない後半よりも全然困った所だった。

・ティアムーン帝国物語
 悪役令嬢が死刑を回避する話だが、別に反省する事なくただ自分が生きるために回避してる所が斬新だった…とか書いてると最早良いとこ探しみたいになってるが、それがコミカルさを引き出してるしミーア姫のデフォルメ顔も豊富な上に外さないので楽しかった。日本の行く末を憂うミーア姫も見れたりした。

 天然があまり物語に機能せず、どっちに転んでも全部ナレーションがこのお陰で状況が良くなったと語って済ませてるのは後出し感もあり勿体なかった。

・僕らの雨いろプロトコル
 Eスポーツを題材にしたゲームだが肝心のゲーム描写にお金を掛けるのは難しい…となってるのは残念。とはいえEスポーツという新興の文化の未成熟さと子供達の未成熟さを重ねて認めてくれない周囲に抗う脚本になっていたのは良かった。瞬が意地になってもう負けたら美桜に会わない!と啖呵切って出てきたり、その結果瞬と別れるのは耐えられないと気付き美桜自ら立ち上がったり、悠宇も退路を断つためだけに仮面を外したり、終盤の諸々が全部若さ故の勢いで動いていた気がするが、そういうテーマだからなのかもしれない。美桜が歩けないから必然的に自宅に居るのが基本だったり、悠宇がばくれつ君としてチャットしていたりと、ヒロインズが個別に瞬とやり取りしている事が多くてお互いの瞬への気持ちがよく分からない中で、睦生君だけは別に話もしてないのに今の状況を完全に把握してるのが面白かった。

ポーション頼みで生き延びます!
 
ろうきんと同じFUNA先生による、同じABC放送AMAZING枠でのアニメ。す、すごい作品だった…。ろうきんの終盤、ミツハ殿が自分の周りの人物を救うためなら敵とみなした相手にはどんどんシビアな面を出して陥れるのを見て結構残念に思っていたのに対して、こちらのカオル殿はかなり序盤から、傷ついた不良少年ぐらいあらゆる大人を最初から敵とみなして噛みついていたので、中盤には株が底値になっていた。ただ、底値になってしまうと後は上がる一方であり…、と言ってもまあ結局そんなに上がったわけでは無いのだが、カオル殿がこういう人間かと分かってしまえば権力者に噛みつくムーブにも一貫性があって別に困りはしなかった。それを考えるとろうきんを先に放送して作者のやり方を見せておいて、その後にポーション頼みを放送したのは結構良い作戦だったんじゃないかとすら思える。
 あまりその面が目立ってはいなかったが、カオル殿が傍若無人に振舞えば一応その報いを受けるようにはなっており、けしてカオル殿の行動が正しいと押し付けている訳ではなかった(と思いたい)。カオル殿の行動は万能の力を分け与えられた主人公としてはあまりにも性格が悪いものだが、そんな性格の人間が繰り出してくる行動からは破綻しておらず、シナリオ自体は理路整然としていたので、なんでこいつがこういう行動に出るんだよと思いたくなるような他所の作品にもカオル殿の煎じた爪垢ならぬポーションを飲ませてやりたいと思わなくもない、…いややっぱり止めておいた方が良いか。

薬屋のひとりごと(1クール目)
 日曜深夜の日テレ新枠という他のアニメと被っていてリアタイで見づらい上に録画失敗するんじゃないかとヒヤヒヤする時間帯での放送な事を除けば完璧なアニメ。作法に則って働く後宮の人間
達の所作の作画、壬氏や王妃更には妓女のように美しさに説得力を持たせるための艶のある髪や顔立ちの描き込み、テンポを出したり後宮そのものから猫猫が一歩引いている感を出すデフォルメの使いどころ全部上手い。まあ4話が特に凄い事は皆触れるから良いか。
 悠木さんの演技も素晴らしくて、女子中学生のオタクだったら猫猫の真似したくなるというのも分かる。12話で後宮を追い出されないようにビクビクしつつも欲が見えないように震えながら「私はただの女官です」と言っている所や、その後に後宮を追い出されて「え。」と一文字で自分の期待から外れる結果になった事を表現する所の演技が凄かった。

アイドルマスター ミリオンライブ!
 765プロオールスターズや、総勢39名のライブ等、物量がトンデモ無くてもハイクオリティなCGライブ映像を作り上げていて白組の技術力の高さが分かる。ライブ演出自体もカッコいい。ただ本作に限らず昔からそうだけど脚本:加藤陽一さんの手癖感が凄くて、水着回で壁を登るのはまだ良いとしても、他のアイドルがステージでパフォーマンスしてるのを見て「私も頑張らなきゃ」みたいな、別にこのアイドルが言わなくても良いようなとりあえず褒めてるのを聞いた時に凄い虚無な気持ちになってしまう…。

キャプテン翼 シーズン2 -ジュニアユース編-(1クール目)
 1期と結構スタッフは変わったが相変わらずめちゃくちゃカッコいい演出がバンバン飛んでくる。ハーモニーや集中線、ストリーム、入射光等、撮影で画面内にタッチそのものを足すような処理が多くなされていて、原作の漫画に近づけてその勢いを再現しようとしているのだと思うが、この演出に一切外れがないので凄い。実況や周りのリアクションで凄さを解説しているのが単なる台詞で
はなく最早一種の型のようになっていて、視聴者にとっても驚くべきシーンなんだと受け入れやすくなっているのが見事。たまに勢いがあり過ぎてギャグになっているのも、話の流れはぶった切らずに見る側の感情を色んな方向に持っていけるので完成されている作品と言っても過言ではない。

 サッカーは11人でやる競技ながら、この作品で活躍するのは各チームのエースであるごく数人だけで、サブキャラにあたる人物が決勝点を挙げるような大活躍はまずないのだが、逆を言えば展開による大番狂わせを封じているのに、エースを必ずカッコ良く描いているのだから恐ろしい作品だと思う。原作自体が一時代を築いて世界中のスタープレイヤーの中にもファンが居るのも頷ける。
 特に、爽やかなイケメンタイプの主人公:翼(と言ってもこの作品にビジュアル面での描き分けは無いに等しいのだが)が試合では並々ならぬ闘志をむき出しにしていて、勝ちたい気持ちは誰よりも持っているのが熱い。実際のスポーツの世界では強者にとって当たり前のメンタルなのかもしれないが、結構創作物では普段の温厚さと剥き出しの強い闘志を併せ持つのは珍しい気がしていて、大谷翔平選手がWBCの時に見えた闘志と重なるものがあるので一周回って今風なキャプテンシーの描写だなと感じた。3クール?あるようで今後も見どころある試合が待っているのが楽しみすぎる。

・ドッグシグナル(1クール目)
 最初は丹羽さんの態度の悪さや、元カノが出ていく際に自分が飼ってた犬を置いていく上にその犬の騒音でアパートを追い出されそうになっていたりと未祐君が不憫すぎて見てるのが辛かったんだが、徐々に面白くなっていった。犬の行動は全てパターンがあると理解し、そこから何を考えているか分かるが、憧れの恩師が突き放すように言った言葉の裏は読めずそのまま裏切られたと思って心を閉ざしていた丹羽さんの心を、犬の事は全く分かっていなかった未祐君が解きほぐしていく構造が素直に上手い。こうなると未祐君の元カノが出て行ったのも何がすれ違いがあったからという話になるんだろうか。

・でこぼこ魔女の親子事情
 たかたまさひろ天才アニメーションディレクター様…。冰剣がシリアスベースの中にギャグを入れていたのに対して、本作はコメディベースなのでこちらの方が多くの人が受け入れやすいんでなかろうか。16bitと並んで古賀葵さんのコメディ演技が光っていた。その一方で6話「薔薇園のおしりあい事情」のように良い話も当然こなせるのは流石だ。
 自分は特に10話Bパートの「本音と建前の公園事情」が好きだった。どいつもこいつも欲望丸出しで互いにツッコみあっている作品で、本音が言えずに空回っているレデさんが凄く面白かった。表情と裏腹の涙が悲しすぎる。周りのママ友たちはしっかりレデさんの言う事に従っていて、ちゃんと慕われてる良い人なんだなあと分かるのも楽しかった。

 単に原作の瞼の影響で出来る影の色使いからそうなってるだけな気もするが、アリッサが黄色い瞳なのに上の方が青くなっているのは、血が繋がっていないながらもビオラと同じ目の色をしている親子の証なのかなとほっこりしていた。

・君のことが大大大大大好きな100人の彼女
 原作を追っては無いが、度々話題になるのでいくつかの話数は読んだ事があった作品。アニメもめちゃくちゃ面白かった。原作の破天荒さは勿論、メタネタも佐藤光監督がアニメ用に上手くチューンしてるだけでなく、キャラデザ矢野茜さんのように原作の絵柄を再現しつつ自身の特徴もしっかり盛り込める人が絵的な面でも攻めた内容にする事でハイテンションぶりが空回らず相乗効果を生んでいた。
 構成が見事で、最後にちゃんと最初のヒロインである羽香里を連れ戻すために皆んなが動く中でもう一人のファーストヒロイン(?)の唐音にも見せ場や心情描写を多くして、最終的には新ヒロインが増える形で問題が解決するようになっている。しかもその新ヒロインの羽々里は恋太郎が既に5股だからこそ落とせるようになっており、全てが作品の設定を活かして丸く収まるのが素晴らしい。しかしこれはヒロインが更に増えていくとそういう収束は不可能になっていくだろうし、2期やその後も続いて行ったとしてもカオスさが加速していく投げっぱなしエンドとかになりそうだ。投げっぱなしは投げっぱなしで佐藤監督なら上手くやってくれそうだから楽しみだけど。

範馬刃牙 第2期【野人戦争編】
 原作で読んでいた時はこの辺まで来るともう展開や理論についていけない事が多かったんだが、アニメで見ると1話で原作数話分進むのであれだけ待ってこれかいという事もなく結構楽しめた。漫画だとほぼ板垣先生一人の暴走に見えるがアニメだと何人もの人間がこのアニメを作るために尽力しているので正気さが担保されているようにも思えたのかもしれない。2クール目の地上最大の親子喧嘩の話は好きなので楽しみだ。

・MFゴースト
 最高。こんな面白い作品になるとは。前身の頭文字Dは新劇場版を途中まで見たぐらいなもののそれも確かに面白かった。海外アニメのスティーブンユニバースでまでパロディされるのも納得である。

 多くのキャラが登場するもメインキャラ数人以外の日常会話は無く、レース中は当然直接会話が出来ないが、キャラやメカニックの心情だけでなく、実在のメーカーの実在の車名を出す事でブランド間でも意地の張り合いが感じられるので、上手くショートカットして因縁を構築している。ラウンドガールの存在が前時代的と言われるのは分かるが、主人公のカナタがそこに興味が無かったり、逆に熱中する人間が存在するのを理解した上でこのアホな制度を利用してでも上に行こうとするハミケツのマミのような人間も居る事でバランスを取ってるとは思うし、こちらも因縁やドラマを生むのに機能している。7番(恋)に祝福されるために奮起する相葉がブレーキングでミスを犯す一方で、後続のカナタが同じ状況になるも見事そこで成功を収めて上位に食い込む展開の9話は素晴らしすぎる。主人公が1位になれないレースでこんなドラマの作り方があるとは。
 その前話ラストでカナタが「レッツゴー…!」とクールにスパートを掛ける所も、あまりのカッコ良さで言い方を真似したくなりつい口ずさんでみたぐらいだった、そんな角度の褒め方されてもアニメも嬉しくなかろうが。2クール目も本当に楽しみだ。

オーバーテイク
 TROYCA制作でアイドリッシュセブンでも演出力の高さを発揮していた人たちが作っているだけに映像面の見所が多く、特徴的な鼻筋の丸い影をハートにするのはアイデア力の高さに感心した。

 端的に言うとエモい話にしたいというのがハッキリとした狙いだと思われ、最終回のレース前の光景など画面は良かったが話はエモ方向でこそあってもエモさの度合いは普通だねと感じる程度だったかなとなる。

 あと、ちゃんと説明があったかもしれないがタイトルのオーバーテイクという言葉が作中であまり意識されず、同期のMFゴーストで実況が口にしてくれてなければ意味が分からないままだったかもしれないのも残念。

・ダークギャザリング(2クール目)
 1クール目以上に盛り上がりを見せて
2クール目は更に面白かった。どんどんヤバい霊が出てくるインフレにしっかりと対応し、怖さが膨れ上がっていくのを映像面と霊の出自自体のおぞましさで表現していた。その上でホラー映画にありがちなジャンプスケアが殆ど無いので、ホラー映画が苦手な自分のような人間も視聴を止めることなく純粋な怖さ・厭さを堪能できるようになっているので凄い。まあ連続した映像の実写と違って、アニメは時間を盗んでいる動きになるし、作画と背景で質感が違うので奥に何か居る等の場合も不安を煽るのが難しく、ジャンプスケアしても普通にカットが切り替わったぐらいに思えてそこまで怖く無いというのはあるのかもしれないが。
 親の愛を受けれないまま義母に殺された少年霊に対して「来いよマザーファ〇カー」はあまりにも強いパンチラインでめちゃくちゃ笑ったし、グレイの人形に入っているお気に入りの霊がパワーアップする際の台詞で「進化?…いや違う」は設定がポケモンバトルな事を最大限活かしていてズルい。違うなら言うな。言い方は悪いが、女の子の口の悪さや暴力性・被虐表現があってもここまで萌えギャグアニメとして楽しく見れるのが凄くて、池畠監督の他作品にも共通するもので天才的なセンスが発揮されているのを感じる。そんな池畠監督によるセルフパロディがこちら。2枚目のみらい・えもに見えるキャラは1コマしか映って無くて最早サブリミナルの領域ですぐには気づかなかった。

 神・そして空亡という二つの巨大ボスが待ち構えている事、意外とかませにならなさそうな味方霊能力者の登場、それ以外の一般人には被害者も出てきている事等々、ストーリーがどんどん大きく展開していて、非常に続きが気になる状況なのでなんとしてもアニメで続きを見たい。アニメで続編をやろうにも数年掛かる事が殆どなのでまあやれるんなら続きをやってくれたら嬉しいぐらいに思うようになっていたが、久々に強く続編を願った作品だった。
 16ビットセンセーションよりも数日早く、タッチの差でChatGPTを登場させたアニメだという事も記録に残しておこう(全アニメの中で最速なのかは知らない)。

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 以上が2023年10-12月期の感想。流石に作品数が多いので感想もこれまでで一番長くなった。2023年は見たアニメが220作ぐらいで、見ていたが最終回まで見れず脱落してしまったアニメが30作ぐらいらしい(5分アニメがあったり、分割クールを2作に数えたり、逆に連続クールを1作で集計したりなので正確な所はよく分かりません。毎クールの録画の数で考えると大体合ってると思う)。結構頑張って見てるんだし、折角ならもっと多くの作品の感想も書きたい所なのだが、本当に自分の文章力が無さ過ぎて「無」の感想しか生み出せないので諦めてしまっているものも多くて悲しいね。どうにかしたいです。
 ちなみに、話数の10選は記事にしたが、作品としての10選はこんな感じでした。話数10選と半分ぐらい同じではあるが、半分ぐらい違うのは複数話数で楽しませてくれた・最終回に向かってどんどん盛り上がった等の理由によるもの。

 2024年も沢山アニメ見まーす。