話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

 昨年に続いて、aninado様で集計されている年間の単話10選をリストアップする企画に参加させてもらう。

【お知らせ】「話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選」の集計を今年も「aninado」で行います!

https://aninado.com/archives/2023/12/10/1047/

 去年の自分の10選結果はこちら↓

 それでは今年の個人的10選を。順番は単にその話数を見た日付順です

①:アイドリッシュセブン Third BEAT! 第28話「変わる景色」

監督:別所誠人
脚本:関根アユミ 絵コンテ:林宏樹 演出:山本隆太、渡部周
総作画監督:サトウミチオ、鈴木勇、林夏菜、村山未菜美 作画監督清水明日香、小川真由美、小西紗希、森下智恵、スタジオギガ
選出理由:実は異国の王子なメンバー・六弥ナギの政敵である、兄の謀略によって主人公グループの歌う曲の歌詞がナギへの脅迫メッセージにされていた…という話。この曲が現実でもそのままの歌詞でリリースされている事もあり、仕掛けの大掛かりっぷりがシリーズの中でも今までで一番のもので衝撃を受けた。描写から考えると、作中世界の作詞家の人が脅されながらも普通に聞ける歌詞に仕立て上げた事になるのが面白い。

 同時に、3期のボスである月雲了のアイドル嫌いの空虚な理由が明かされるが、極論めいた理由だからこそ本作でゴールと見据える理想のアイドルとはどんな人間の願いにも応える存在である事だと導かれるようになっていて、シナリオによるテーマの伝え方が非常に上手かったので。


②:冰剣の魔術師が世界を統べる 第8話「世界最強の魔術師である少年は、薔薇を鼓舞する」

監督:たかたまさひろ
脚本:長瀬貴弘 絵コンテ:井端義秀 演出:たかたまさひろ
総作画監督:嵩本樹 作画監督:Chae Gwang han、Won Chang hee、Kwon Oh sik、橋本有加、相澤秀亮、王國年、岡崎晃、Limeros、Shiinamon、Rven、YuePants、Cocomantot、Jomz、Jed Panulin、Nigel Tuvera、Mowamowa
選出理由:彗星のごとく現れた天才アニメーション。単発話数というより作品全体でアイキャッチやED中の予告、更にその時の音楽の使い方でリズムを作るセンスが他に類を見ない卓越したモノであった。その中でも選出話数は監督自ら演出を担当した話数の一つで、普段トボけているように見える作風なのに決める所はしっかり決められるアニメとしての実力の高さが、レイ=ホワイトによるアメリアへの説得シーンでいかんなく発揮されていた。
 そして何よりも、試合の観客が映るカットで音声を発していないキャラにも口パクで会話させるといった所はこのアニメを象徴するかのような気配りのある演出で、作品の真価に触れて感動したので。


③:君は放課後インソムニア 第1話「能登星」

監督:池田ユウキ
脚本:池田臨太郎 絵コンテ、演出:池田ユウキ
総作画監督:福田裕樹 作画監督:熊田明子、田澤潮、柳田幸平
選出理由:作品自体1クールずっと面白かったが、第1話の序盤からいきなりグワッと心を掴まれた。眠れない悩みを抱えている中見が天文部の基を訪れて曲に出会うまでのシーンでは、カットが変わっても時間が盗まれずに、連続した時間が流れているような監督自らのコンテ演出が素晴らしく、何かが起き始めるのを予感させる空気そのものを描いていた。その後の夜明けまで過ごすシーンも、はしゃぎすぎて大声を出さないようにする緊張感とその中を満喫する高揚感の混ざったスペシャルな時間が楽しく、最高のスタートを切った1話だったので。


④:スキップとローファー 第11話「ワイワイ ザワザワ」

監督:出合小都美
脚本:日高勝郎 絵コンテ、演出:阿部ゆり子
総作画監督:井川麗奈 作画監督:天野和子、Lee san jin、柳瀬譲二、Lee Min-bae、Joo Ok-yoon
選出理由:演劇部・兼近先輩の真っすぐなお芝居と、その後の褒められて嬉しそうにしている純粋さを見て志摩君が心動かされる話。兼近先輩役の木村良平さんの演技が本当に素晴らしい…。素人ながら他の演劇部員よりは達者に見える舞台の演技と、舞台後に友達から褒められて一瞬素になるもすぐにいつも通り明るく振る舞う姿を見せる演技、どちらも凄かった。作中の志摩君が再びお芝居に向き合おうと考えさせるきっかけなだけに、作品外の「お芝居をする演技」も外すわけにはいかない中でバッチリと説得力を持たせていたので。

 

⑤:遊☆戯☆王ゴーラッシュ!! 第62話「再会」

監督:近藤信宏
脚本:竹内利光 絵コンテ:橋本直人 演出:駒井克行
総作画監督作画監督松下浩美(一人原画)
選出理由:前作・遊戯王SEVENS最終回の素晴らしい補完、前作主人公の遊我がゴーラッシュ現在までやってきた事の説明、ゴーラッシュでのデュエルがなぜこのようになっているかの経緯をたった1話で非常に綺麗に語ってくれた。視聴者が一体どうなったのか気にして止まない遊我とルークたちの再会シーンは描かずに、シュレディンガーの猫の理論を用いて出会えた未来を期待させる作りに脱帽した。
 また、これまでのシリーズと比べてデュエルが非常にシンプルになった経緯について、遊戯王というカードゲーム自体の歴史や過去のアニメシリーズへの自己批判までもストーリーに組み込んでいるからだと明かしてくれた天才的エピソードだったので。


⑥:BanG Dream! It's MyGO!!!!! 第10話「ずっと迷子」

監督:柿本広大
脚本:後藤みどり 絵コンテ、演出:梅津朋美 CGディレクター:大森大地、遠藤求
総作画監督:- 作画監督:茶之原拓也、依田祐輔
選出理由:これまでの話数でギスギスした人間関係が崩壊していく様子をゲラゲラ笑いながら見ていたが、再結成ライブで涙しながらの演奏シーンには一転こちらも感動で打ちのめされボロボロ泣かされた。バンドリ無印の主役バンド、Poppin'PartyにCiRCLINGという、他者との繋がり・閉じた内側(仲間)の形成・途切れないループ等々、輪の持つイメージをテーマにした自分のめちゃくちゃ好きな曲があるが、MyGOのメンバーが輪になって演奏するのも恐らくこれを意識やリスペクトしているのだろう。公式が上げてるCiRCLINGのライブ演奏の方でも途中で輪になって演奏していた。


 CiRCLINGの歌詞に「永遠の途中」というフレーズがあるが、今回の10話ライブで新たな世代のMyGOが永遠を継承してスタートするのを見れたので。


⑦:ONE PIECE 第1075話「二十年の祈り!ワノ国を取り戻せ」

監督:長峯達也、暮田公平、伊藤聡伺
脚本:中山智博 絵コンテ、演出:小山保徳
総作画監督:市川慶一、松田翠、涂泳策(シリーズ通してのクレジット) 作画監督:涂泳策、北崎正浩
選出理由:数話前の大々的な宣伝までしたニカルフィ覚醒回ですら、原作に追いつかないようにする都合から間延びを感じざるを得なかった中で、本話数ではワノ国に住む人たちがこれまで受けてきた仕打ちやその地獄のような状況から抜け出したいと切に願う気持ちが、オリジナル要素も上手く足して間延び無く演出されていた。普段は大抵原作1話分をなんとか伸ばして消化している中で、本話数は1.5話分とわずかながらも多めに原作使用しており、バトルの決着以上に、長期間掛けて紡いできた登場人物たちの感情の決着を大事にしようとして作品を盛り上げようとした気概に心打たれたので。


⑧:川越ボーイズシング 第9話「いつかのアイムソーリー」

監督:松本淳
脚本:川越学園文芸部 絵コンテ、演出、作画監督:武内宣之(一人原画)
選出理由:このタイミングで部員の一人・IT君が離脱というだけでも珍しいのに、その理由が配信者をしている父親の炎上が原因にあり、会社の倒産等の理由以上にままならない運命のストーリーと、印象的なアングルや雨を使った演出がバッチリハマっていた。工程の簡略化が目的でもある背景オンリーやキャラのアップをコンテや編集で差し込むタイミングをかなり工夫して異様な空気の醸成しているだけでなく、時にはかなり描きこまれた車のライトを映してギャップを生み出していたりと、あらゆる方法で画面を保たせるシャフト系技術の粋を見たので。


⑨:ポケットモンスター 第32話「ラプラスの想い、仲間を想い」

監督:でんさおり
脚本:松澤くれは 絵コンテ:齋藤徳明 演出:奥野浩行
総作画監督:伊藤京子 作画監督:青葉稜太郎、平松康佑
選出理由:4月より始まった、リコとロイを主人公とする新シリーズ。単体話数がどうという以前に作品自体が今年ナンバーワンのアニメだと断言したい。長年続けてきた前作のシリーズの他にも、近年はwebでもかなり多くのアニメを発表してきたポケモンだが、本作が圧倒的に自分の好みの作風をしてくれている。正直10選が1作品1話で無ければ、このポケモン新シリーズから5本は選びたい所であり、1話に絞るにしてもかなり迷った選出であった。
 そんな中で自分が選んだのは比較的最近の話数である32話なのだが、そもそも本作はポケモンの事をかなり意識的に「動物」として描いていると感じていた。勿論ゲーム同様にゲットしたポケモンは人間の言葉を理解して指示に従い技を繰り出し戦闘もするのだが、それでも完全な意思疎通は出来ていない別の生物であるという事はハッキリと線引きしている。指示を出すにしたってポケモンが動きやすいようにしたりこちらが合わせて行動したりする必要があるし、ブレイブアサギ号という飛行船の中で人とポケモンが共に働いているコミュニティ内ですら、30話では更にその内輪のポケモンだけのコミュニティも形成されている事を描いていた。

 野生のポケモンともなれば猶の事人間の基準とは異なるスタイルで生きている訳で、選出した32話では人間の船の積み荷を奪っていたのが実は野性のポケモンだったと分かるのだが、問題が解決してもそのポケモンたちが海賊行為を続ける事は見逃す(というより元から咎める気が無い)決断自体と、そう決断しても確かにおかしく無いと感じさせるこれまでの描写が本当に素晴らしい。それに加えてこの台詞である↓。

 この台詞を聞いた瞬間に、誇張抜きで涙がボロボロとこぼれてしまった。まあ他話数でもしょっちゅう実際に泣いてるぐらいに入れ込んでいるのだが。ここ数作のゲームの方でもかなりポケモンとの接し方に色々な側面がある事を描いてきてはいるが、やはりゲームの性質上メインストーリーを進めるためにはバトルの事を一番意識していまう。その意識がある中で本話数では「ポケモントレーナー」という耳馴染みのある言葉を、戦わせるのが上手いだけでなくポケモンの事を深く理解できる存在であるのだと語っていて、ここまで世界観を拡大させるように使えるものなのかと、とてつもない衝撃を受けた。そんな感じで他より長めに語りたくなる程にハマったので。


⑩:キャプテン翼 シーズン2 -ジュニアユース編- 第11話「猛虎の目覚め」

監督:小野勝巳
脚本:樋口達人 絵コンテ、演出:小林彩
総作画監督渡辺はじめ、佐賀野桜子 作画監督:西島圭祐、王敏、周健
選出理由:日本代表対イタリア代表戦の決着回。力と力・意地と意地のぶつかり合いで細かな作戦は無く全てが勢いで展開していくのだが、その勢いがとてつもない。意外な伏兵が決勝点を挙げるとかそんな事は一切なく、順当にメインキャラが活躍していく中で幾度となく使われるハーモニー処理(従来の美術ハーモニーでなく撮影の特殊効果だと思うが)を一度も外さずに真っすぐ中心を突き破るような演出力。これぞ少年漫画原作という王道の熱さが感じられたので。

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 以上10作品。自分は映画や独占配信アニメをあまり見れていない分、毎週放送のテレビアニメを待ち受けるからこそ輝きを放つ作品やエピソードに巡り合えるのを大切にしていきたいと思います。ついでに10選以外の作品についても書いた感想は以下の通り。

2301-03月期アニメの感想-1 - ブシだらものおきば

2301-03月期アニメの感想-2 - ブシだらものおきば

2304-06月期アニメの感想-1 - ブシだらものおきば

2304-06月期アニメの感想-2 - ブシだらものおきば

2307-09月期アニメの感想 - ブシだらものおきば

2310-12月期アニメの感想-1 - ブシだらものおきば

2310-12月期アニメの感想-2 - ブシだらものおきば